火星の地上、シチノコの森

遠くの空で雷が鳴っている

立ち止まる

 

振り返る

どこを目指していたのか

もっと華やかな、賑やかな、ハッピーな場所を目指していた気がする。

 

しかし周りを見渡してばかりいるようで、それとして実は自分の内面しか見えていなかったようで、

それなのに自分のことは全く知らないことに気がついた。

それはまだ続いてる。

色々なものに心を奪われる。憧れる。バラバラの世界に。

 

一点に集中できたことなぞ、今まで一度もないほどに。

憧れているものと自分を勘違いする。

 

自分が人間だと思っている犬のように生きてきた。

ある日、ギターソロが全然弾けない自分に出会って、とてもとても驚いた。

早いアルペジオも、ジョニーBグッドのイントロもダウンピッキングも弾けなかった。

アンプにギターを繋ぐのがめんどくさく、流れの作れない部屋の中で、時間が滑って行った。

 

【ああそっか。きっと何かと引き換えにギターソロが弾けた自分を売り飛ばして交換したんだ。】

 

だからギターソロが弾ける部分の自分はなくなって、いまは弾けない。

そういうことにした。21歳の時に。

でも大丈夫。これからもう一度、ギターソロをゼロから練習して習得すればいいんだ。

 

音楽にうまく向き合えないから、他のことに精を出した。

心はずっとあの空の上

 

なんでバンドメンバーがいないんだろう?

一番初めっから、バンドにだけ、憧れてきたはずなのに。

バンドにだけ、本当にそれだけだ。

 

弾き語りじゃない。バンドなんだ。

生活の全てを、人生の行の全ての矛先はバンドの中にあった。

虚空のバンドだ。飲み込まれていく。その黒い一点の穴に。

存在しないバンドの中に、自分の行動の全てが呑み込まれ、空からに空回り。

 

ああ、国立の田んぼのカエルの合奏が聞きたい。おちょやん面白い。ディズニー映画が見たい。

6番目の小夜子も見たい。凛として時雨のラジオ素敵。海にも山にも川にもライブハウスにも柴犬にも会いに生きたい。アリの巣だけを眺めていたい。マリア観音を聴いている。宇宙兄弟を読んでいる。月を見上げている。バンドを組みたい。ゆらゆら帝国になりたい。そこの一点。それなのに。ごちゃごちゃの頭の中で定まらない。

 

ただ一つ言えることは、

もっと華やかな世界を目指していたということだ。シャウトをしても、チャーミングでありたい。ひょうきんでありたいし、どこか、ユーモラスでいたいのだ。足元に咲く野花のように、生きるために生きるアリンコのように、そこにいれればと思う。

 

大木に憧れている。400年の大木。貴方のように僕もまっすぐ歪んで立って見たい。

あんたに憧れている。僕は渦中にいない。外側の世界で、もだえているだけさ。