火星の地上、シチノコの森

遠くの空で雷が鳴っている

歌詞の構想

あの子は樹の中に住んでいる。

夜空にはこちらを睨みつけるオパール彗星が真っ直ぐに向かってきているのが見える。

ほんの瞬きの間に溢れていったプラスチックゴミを、まとめて火星に送る計画が、

進んでいるという。

森の中で、DJのライブが行われる。なんて言ったけな。あれ。

セカンド・サマー・オブ・ラブ、マッドチェスターの音楽が聞こえてくる。

 

あの子は樹の中で眠っている。

まんべんなく生きてきた僕は、ある日自分には何もないことに気が付く。

いや、一昨日までは少なくともこの街一番の天才だったはずだが。

どうしてあの人はあんなにも毎日のようにライブができるのだろう。

どこからインスピレーションを得て、どのくらいのスピードで音楽を作っているのか。

 

僕は音楽よりも、一本の樹のことに興味がある。

なんで樹は、生まれてから死ぬまで、同じところで、その場所を見守るように

生きているのだろう。まるで妖精だ。まるで、それは本物の仙人のようだ。

物を言わず、ただそこにいる。悟りの境地のようじゃ。

 

レンガ造りの都市に雪が舞い始める。

煙を出す煙突と、シチューの匂い。まんべんなく夜の中に浮かぶ明かりが

人の心を癒す。これが完璧な哲学だ。

樹の中のあの子の樹の上にも雪は遊ぶように降りて

リンリンリンと、誰かが歌い出すように。

あるいは都市の小さな家で。あるいは森の中の小さな暗がりの中で。